釉薬の作り方を調べている人の多くは、市販釉薬を使うだけでは出せない色合いや質感を、自分の器に合わせて調整したいと考えているのではないでしょうか。
釉薬は単に粉と水を混ぜる材料ではなく、長石、珪石、カオリン、石灰、灰、酸化金属などが焼成中に反応し、素地の表面にガラス質の層を作るための陶芸材料です。
そのため、基本の考え方を知らずに目分量で混ぜると、溶け残り、流れすぎ、貫入、剥がれ、発色不良、食器への不安などが起こりやすくなります。
一方で、原料の役割、計量の順番、水との混ぜ方、テストピースの作り方、焼成温度との関係を押さえれば、初心者でも安全に小さな試作から始められます。
ここでは釉薬の作り方を、実際に作業する順番に沿って、失敗を減らしながら自分の釉薬へ育てるための考え方まで詳しく紹介します。
釉薬の作り方の基本
釉薬作りで最初に大切なのは、いきなり美しい色を狙うことではなく、安定して溶ける基礎釉を作ることです。
基礎釉は、ガラス質を作る成分、溶けやすくする成分、流れを抑えて安定させる成分のバランスで成り立ちます。
この土台が理解できると、透明釉、白濁釉、灰釉、鉄釉、マット釉などの違いも、感覚だけではなく原因から考えられるようになります。
まずは少量で調合し、素焼きしたテストピースに掛け、焼成後の結果を記録しながら微調整する流れを身につけるのが安全で確実です。
釉薬は焼成でガラス化する
釉薬は、乾いた状態では粉末と水が混ざった泥状の液体ですが、本来の働きは焼成中に高温で溶けて素地の表面を覆うガラス質の層になることです。
このガラス質の層が器に光沢、色、肌合い、防水性、汚れにくさを与えるため、見た目だけでなく使い心地にも大きく関わります。
ただし、すべての粉が同じ温度で自然に溶けるわけではなく、珪石のように溶けにくい成分を、長石や石灰などの融剤が助けることで、陶芸の焼成温度に合った釉薬になります。
つまり釉薬を作るとは、色粉を混ぜる作業ではなく、焼成温度の中でどの程度溶かし、どの程度とどめ、どのような表面にするかを設計する作業です。
初心者は見本写真だけで判断しがちですが、同じ配合でも粘土、厚み、窯の位置、酸化焼成か還元焼成かによって結果が変わるため、必ず自分の環境で試す必要があります。
三つの役割で考える
釉薬の配合は難しく見えますが、最初はガラスを作る成分、溶かす成分、安定させる成分の三つに分けて考えると理解しやすくなります。
ガラスを作る主役は珪石などのシリカ系原料で、透明感や硬さに関わりますが、単独では高温でなければ十分に溶けにくい性質があります。
溶かす成分は長石、石灰、木灰、フリットなどで、焼成温度の中で釉薬を溶けやすくし、光沢、流動性、発色にも影響します。
| 役割 | 代表的な原料 | 主な働き |
|---|---|---|
| ガラス形成 | 珪石 | 透明感と硬さを作る |
| 融剤 | 長石・石灰・灰 | 溶けやすくする |
| 安定化 | カオリン・粘土 | 流れを抑える |
| 色付け | 酸化鉄・酸化銅 | 発色を加える |
安定させる成分であるカオリンや粘土は、釉薬が流れすぎるのを抑え、沈殿しにくさや掛けやすさにも関わるため、少量でも仕上がりの扱いやすさを左右します。
最初は小さく作る
釉薬作りを始めるときは、いきなり一キログラム単位で作るのではなく、合計百グラム程度の小さなテストから始めるのが現実的です。
小さく作れば失敗したときの材料ロスが少なく、配合を少しずつ変えた比較試験もしやすくなります。
たとえば基礎釉を百グラム作り、そこから酸化鉄を一パーセント、二パーセント、三パーセントと加えたテストを並べれば、発色の変化を自分の窯で確認できます。
- 合計百グラムで試す
- 原料名と割合を記録する
- 水量を少しずつ足す
- テストピースで焼く
- 結果を写真に残す
最初から完成品用に大量調合すると、失敗した釉薬を捨てる判断が難しくなるため、試作と本番を分ける意識を持つことが上達の近道です。
配合は重量で管理する
釉薬の配合は、スプーン何杯という体積ではなく、必ず重量で管理します。
粉末原料は粒の大きさや湿気の含み方によってかさが変わるため、体積で量ると同じつもりでも成分比がずれてしまいます。
特に長石、カオリン、珪石、石灰は見た目が似ていても比重や粒度が異なるため、デジタルスケールで一グラム単位まで量ることが重要です。
配合表では原料の合計を百として考えることが多く、長石四十、珪石三十、カオリン二十、石灰十のように記録すると、後から二倍量や五倍量に換算しやすくなります。
小数点以下まで厳密に合わせるより、毎回同じ道具、同じ手順、同じメモの取り方で再現性を高めることが、実用的な釉薬作りでは大切です。
水は一度に入れない
粉末原料を混ぜたあとに水を加えるときは、必要量を一気に入れず、少しずつ様子を見ながら加えるのが基本です。
釉薬は水が多すぎると素地に薄くしか付かず、焼成後に色が弱くなったり、ムラが目立ったりします。
反対に水が少なすぎると厚掛けになりやすく、乾燥時のひび、焼成時の流れ、棚板への付着などの原因になります。
目安としては、かき混ぜたときに重すぎず、素焼き素地に掛けた瞬間に水分が吸われ、表面に均一な粉の層が残る状態を探します。
濃度は作品の吸水性や掛け方で変わるため、比重計がない場合でも、同じカップ、同じ混ぜ時間、同じ浸し時間を記録しておくと再現しやすくなります。
ふるい通しで均一にする
調合した釉薬は、混ぜただけでは原料のダマや異物が残りやすいため、必ずふるいに通して均一にします。
ふるいを通すことで、溶け残り、ピンホール、ざらつき、色むらの原因を減らし、素地への付き方も安定します。
一般的には八十メッシュから百メッシュ程度のふるいが使われますが、マットな質感や粗い灰の表情を残したい場合は、狙いに応じて細かさを調整することもあります。
ただし初心者が最初に目指すべきなのは偶然の荒々しさよりも再現性なので、基本の透明釉や石灰釉では丁寧にふるい通しを行うほうが失敗は少なくなります。
ふるいに残った粒を無理に戻すと原因不明のざらつきにつながるため、残渣の量や状態も記録して、原料の管理に役立てるとよいでしょう。
テストピースで判断する
釉薬の良し悪しは、バケツの中の色や粘度だけでは判断できず、実際に素焼き素地へ掛けて焼成して初めて分かります。
同じ釉薬でも、赤土、白土、磁器土では発色や透明感が変わり、器の形によって釉だまりの出方も変わります。
テストピースには、平らな面だけでなく縦の面、角、くぼみを作っておくと、流れやすさ、濃淡、エッジの切れ方を確認できます。
- 粘土の種類を書く
- 施釉方法を書く
- 焼成温度を書く
- 窯の位置を書く
- 焼成雰囲気を書く
焼成後に気に入った結果だけを残すのではなく、失敗したテストも保管しておくと、次に似た症状が出たときの比較資料になります。
焼成条件まで含めて作る
釉薬の作り方では配合ばかりに注目しがちですが、実際の仕上がりは焼成温度、昇温速度、ねらし、冷却、窯の雰囲気まで含めて決まります。
透明に溶ける予定の釉薬が白く濁ったり、マット釉が想定以上に光ったりする場合、配合だけでなく熱の入り方が原因になっていることがあります。
特に酸化焼成と還元焼成では鉄や銅の発色が変わりやすく、同じ原料を使ってもまったく違う印象になることがあります。
温度計の数字だけでなく、熱量の積み重なりを見るためにゼーゲルコーンやオートンコーンを使う考え方もあり、Orton Ceramicではコーンが温度均一性や十分な熱仕事の確認に使われることが説明されています。
自分の釉薬を作るなら、配合表と焼成記録を一体で残し、どの条件でその表情が出たのかを追跡できるようにしておくことが大切です。
原料の役割を理解する

釉薬を安定して作るには、原料名を暗記するよりも、それぞれが焼成中にどのような働きをするのかを理解することが重要です。
同じ透明釉でも、長石を中心にしたもの、石灰を加えたもの、灰を使ったもの、フリットを使ったものでは、溶け方、硬さ、色の出方、流れやすさが変わります。
原料の役割が分かると、失敗したときに何を増やし、何を減らし、どこを固定してテストすべきかを考えやすくなります。
ここでは初心者が最初に押さえたい代表的な原料を、釉薬の骨格を作る視点から整理します。
長石は土台になる
長石は釉薬作りで非常に使われることが多い原料で、シリカやアルミナを含みながら、焼成温度によっては融剤としても働く便利な材料です。
長石を多く含む配合は、透明釉や白っぽい基礎釉の土台になりやすく、そこへ石灰、カオリン、珪石などを組み合わせて溶け方を整えます。
ただし長石を増やせば必ず良くなるわけではなく、アルカリ成分が多い方向に寄ると貫入や流れやすさに影響する場合があります。
| 調整方向 | 起こりやすい変化 | 注意点 |
|---|---|---|
| 長石を増やす | 溶けやすさが出る | 流れに注意する |
| 長石を減らす | 落ち着いた表面になる | 溶け残りに注意する |
| 石灰を加える | 透明感が増すことがある | 過剰な流動を避ける |
| カオリンを加える | 粘りと安定感が出る | 白濁やマット化を見る |
長石は便利な土台ですが、産地や種類で成分が異なるため、原料を替えたときは同じレシピ名でも再テストするのが安全です。
珪石とカオリンが支える
珪石は釉薬のガラス質を作る中心的な成分で、焼き上がりの硬さ、透明感、耐久性に関わります。
一方で珪石は溶けにくい性質があるため、釉薬の焼成温度に対して多すぎると、ざらつき、白濁、溶け残りの原因になることがあります。
カオリンはアルミナとシリカを供給し、釉薬の流れを抑えたり、バケツの中で沈殿しにくくしたり、素地への付き方を整えたりする役割を持ちます。
- 珪石はガラス質を作る
- 珪石は溶けにくさも持つ
- カオリンは流れを抑える
- カオリンは沈殿を緩和する
- 両方の量で質感が変わる
光沢が強すぎる釉薬を落ち着かせたい場合や、流れすぎる釉薬を安定させたい場合は、珪石やカオリンの調整が候補になりますが、増やしすぎると溶け不足になるため段階的なテストが必要です。
灰や石灰は溶け方を変える
石灰や木灰は、釉薬を溶けやすくし、透明感、流れ、色の深み、自然なムラに影響する原料です。
特に灰釉では、植物灰に含まれる成分が長石や粘土と反応し、柔らかい緑味、黄色味、青味、流れの表情を生むことがあります。
ただし天然灰は成分のばらつきが大きく、洗い灰か未精製の灰か、どの植物の灰か、どの程度ふるい通しをしたかで結果が変わります。
市販の石灰は比較的扱いやすい一方で、配合量が多いと流れやすくなったり、特定の色材との相性で発色が変わったりする場合があります。
灰や石灰を使うときは、流れ止めとして高台付近を掛け残す、棚板に道具土や保護材を使う、テストピースを立てて焼くなど、焼成時の安全策も一緒に考える必要があります。
初心者向け配合と調整
釉薬の配合には無数の考え方がありますが、初心者は複雑な特殊釉よりも、原料数を絞った基礎釉から始めるほうが理解しやすいです。
原料数が少ないと、焼成後の変化がどの原料によるものか推測しやすく、次の調整にもつなげやすくなります。
最初の目標は、一回で完成させることではなく、自分の粘土と窯で安定して使える基準を作ることです。
ここでは、基礎釉の組み立て方、色材の加え方、濃度管理の考え方を実用的に整理します。
基礎釉から始める
初心者が自作釉薬に挑戦するなら、まずは透明釉や石灰透明釉のような基礎釉を小さく作るのがおすすめです。
基礎釉は色材を入れない状態で焼き、素地との相性、透明感、貫入、流れ、表面の硬さを確認します。
土岐市の焼き物研究でも、透明釉の基本的な調合例として長石、珪石、カオリン、石灰などの考え方が紹介されており、基礎配合を理解する入口になります。
| 試作名 | 狙い | 確認する点 |
|---|---|---|
| 透明釉 | 素地の色を見せる | 貫入と透明感 |
| 石灰釉 | 明るい光沢を出す | 流れと釉だまり |
| 灰釉 | 自然な揺らぎを出す | 灰のばらつき |
| マット釉 | 落ち着いた肌を出す | ざらつきと汚れ |
色材を入れる前に基礎釉だけで評価しておくと、後から発色が悪いときに、色材の問題なのか、釉薬そのものの溶け具合の問題なのかを切り分けやすくなります。
色材は少量で試す
酸化鉄、酸化銅、酸化コバルト、酸化マンガンなどの色材は少量でも強く発色するため、最初から多く入れすぎないことが大切です。
特にコバルト系は発色力が強く、ほんの少量で青が出るため、初心者が目分量で扱うと濃すぎる結果になりやすいです。
色材は基礎釉百グラムに対して一パーセント単位で段階的に足し、同じ素地、同じ厚み、同じ焼成で比較すると変化が見えやすくなります。
- 酸化鉄は茶色や飴色の方向
- 酸化銅は緑や赤の方向
- 酸化コバルトは青の方向
- 酸化マンガンは茶紫の方向
- 酸化チタンは白濁や結晶感
色材は食器用途や安全性にも関わるため、用途が分からない原料や入手経路が不明な粉末を安易に混ぜず、販売元の説明や安全データを確認してから使う必要があります。
比重で掛かり方を整える
釉薬の仕上がりは配合だけでなく、バケツの中の濃度によっても大きく変わります。
同じ釉薬でも、濃い状態で長く浸せば厚掛けになり、薄い状態で短く掛ければ淡く軽い仕上がりになります。
比重計を使えば水と粉の割合を数値で管理できますが、比重計がない場合でも、試験片の重さ、浸す秒数、乾いた釉層の見た目を記録することで再現性を高められます。
初心者は一回の焼成で、薄掛け、標準、厚掛けの三段階を試し、どの厚みで最も美しいかを確認すると、自分の釉薬の適正範囲が見えてきます。
濃度を変えるときは水を足した量だけで判断せず、底に沈んだ原料を完全に撹拌してから試すことが重要です。
焼成テストで仕上がりを育てる

釉薬作りは調合した瞬間に完成するものではなく、焼成テストを繰り返しながら仕上がりを育てる作業です。
焼成前の釉薬は灰色や白色に見えることが多く、焼いたあとに透明、乳濁、飴色、緑、青、マットなどへ変化します。
その変化は温度、熱量、窯の雰囲気、冷却速度、素地の鉄分、釉薬の厚みが重なって起こるため、一つの結果だけで判断すると誤解しやすくなります。
ここでは、テストピース、焼成記録、失敗からの調整を、実際の改善につながる形で整理します。
テストピースを設計する
テストピースは余った粘土を適当に焼くものではなく、釉薬の性質を読み取るための小さな実験道具として作ると役立ちます。
縦面、横面、段差、くぼみを一つの試験片に入れると、釉薬が流れるか、角で薄くなるか、くぼみに溜まった色がどう出るかを確認できます。
さらに白土と赤土の両方で同じ釉薬を試すと、素地の色や鉄分が釉薬の見え方にどれだけ影響するかが分かります。
| 形状 | 分かること | 見る場所 |
|---|---|---|
| 平面 | 色の平均 | 中央部 |
| 縦面 | 流れやすさ | 下端 |
| 段差 | 濃淡の出方 | 角と谷 |
| くぼみ | 釉だまり | 底面 |
テストピースには釘や竹串で番号を刻むか、耐火性のある記録方法を使い、焼成後にどの配合か分からなくなる失敗を防ぎましょう。
焼成記録を残す
釉薬の再現性を高めるには、配合表だけでなく焼成記録を残すことが欠かせません。
同じ配合であっても、最高温度が少し違う、ねらし時間が違う、窯詰めの位置が違うだけで、釉薬の溶け具合や表面の質感が変わることがあります。
電気窯では酸化焼成が基本になることが多く、ガス窯や薪窯では還元や灰の影響が加わりやすいため、窯の種類も重要な記録項目です。
- 素焼き温度
- 本焼き温度
- ねらし時間
- 窯の位置
- 焼成雰囲気
- 冷却の特徴
写真は自然光で撮り、濡れたように見える角度だけでなく、正面、斜め、釉だまり、裏側も残しておくと、後から比較しやすくなります。
失敗を配合に戻す
釉薬の失敗は落ち込む材料ではなく、次にどの成分を調整するかを教えてくれる情報です。
たとえば溶け残りが多い場合は、焼成温度に対して融剤が足りない、珪石やカオリンが多すぎる、または熱量が不足している可能性があります。
流れすぎる場合は、融剤が強すぎる、厚掛けしすぎている、ねらしが長い、縦面に向かない配合である可能性があります。
貫入が気になる場合は、素地と釉薬の熱膨張の相性も関係するため、釉薬だけで解決しようとせず、粘土の種類や焼成条件まで見直す必要があります。
失敗を改善するときは一度に複数の原料を大きく変えず、一項目だけを少し変えたテストを並べることで、原因と結果のつながりが見えやすくなります。
安全管理と失敗対策
釉薬作りでは、美しい発色や面白い質感を追う前に、粉末原料を安全に扱う環境を整えることが不可欠です。
陶芸原料には珪石、カオリン、長石、酸化金属などの細かい粉が多く、吸い込まない、飛散させない、食品や生活空間と分けるという基本を徹底する必要があります。
また、焼成後に食器として使う場合は、見た目がきれいなだけでなく、表面が安定しているか、ざらつきや溶出の不安がないかも確認する必要があります。
ここでは、自作釉薬を安全に続けるための作業環境、保管、失敗症状への対処をまとめます。
粉じんを吸わない
釉薬原料を扱うときに最も避けたいのは、乾いた粉じんを吸い込むことです。
シリカを含む粉じんは陶芸作業で注意すべき代表的なリスクで、厚生労働省の職場のあんぜんサイトでも、粉じんなどを吸入しないことが注意事項として示されています。
粉を袋から出すとき、計量するとき、ふるいに通すとき、乾いたこぼれ粉を掃除するときは、舞い上がりやすいため特に注意が必要です。
| 作業 | リスク | 対策 |
|---|---|---|
| 計量 | 粉が舞う | 静かに移す |
| 混合 | ダマが飛ぶ | 湿らせて混ぜる |
| 掃除 | 再飛散する | 湿式で拭く |
| 保管 | 誤使用する | ラベルを貼る |
作業時は防じんマスク、換気、手袋、専用容器を使い、乾いた粉をほうきで掃くのではなく、湿らせて拭き取る習慣を作りましょう。
食器用途は慎重に考える
自作釉薬を皿、カップ、鉢などの食器に使う場合は、装飾品よりも慎重な判断が必要です。
釉薬表面が十分に溶けていない、ざらついている、酸に弱い、金属成分を多く含む、貫入が深いといった場合、日常使いの食器には向かないことがあります。
特に銅、マンガン、バリウム、鉛など安全性に注意が必要な成分を含む原料は、初心者が食器用に安易に使うべきではありません。
- 用途不明の粉を使わない
- 古い原料を確認する
- 金属成分の量を控える
- 酸に触れる器を避ける
- 装飾用と食器用を分ける
食器に使いたい釉薬は、陶芸材料店の説明、原料の安全データ、専門家の助言を確認し、必要に応じて溶出試験も検討するのが安心です。
よくある失敗を見分ける
釉薬の失敗は見た目が似ていても原因が異なるため、症状ごとに分けて観察することが大切です。
ピンホールは素地からのガス、釉薬の厚み、焼成のねらし不足、素焼きの状態などが関係し、単に釉薬を薄くすれば解決するとは限りません。
剥がれや縮れは、素地の汚れ、釉薬の乾燥収縮、粉の付きすぎ、素焼きの吸水性不足が関係することがあります。
流れすぎは厚掛けや融剤過多だけでなく、窯の位置や最高温度の影響も受けるため、棚板に被害が出る前にテストピースで限界を見ておく必要があります。
原因を一つに決めつけると改善が遠回りになるため、症状、施釉方法、素地、焼成、配合を並べて、最も変化させやすい要素から確認しましょう。
自分の器に合う釉薬へ近づける
釉薬の作り方で大切なのは、正解のレシピを一つ覚えることではなく、自分の粘土、自分の窯、自分の器の形に合うように調整する考え方を身につけることです。
同じ透明釉でも、白土では澄んで見え、赤土では温かい色に見え、厚く掛かったくぼみでは青味や白濁が出ることがあります。
その違いを失敗と決めつけず、配合、濃度、施釉、焼成記録を積み重ねると、偶然に見えた表情を少しずつ再現できる技術へ変えられます。
最初は長石、珪石、カオリン、石灰などを使ったシンプルな基礎釉から始め、少量のテスト、ふるい通し、濃度管理、テストピース焼成を丁寧に行うことが安全です。
色材や灰を加える段階では、見た目の魅力だけでなく、流れやすさ、食器への適性、粉じん対策、原料の安全性まで含めて判断する必要があります。
釉薬は一回で完成させるものではなく、焼くたびに記録を残し、なぜその色になったのか、なぜ流れたのか、なぜ溶け残ったのかを考えることで、作品に合う表情へ育っていきます。


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